第82章 行かない

菅田英樹は上座に座ったまま、まるでソファに釘で打ちつけられたみたいに身動きが取れなかった。頭の奥がぶんぶんと鳴り、耳鳴りすらする。

ローテーブルの上――赤い印の押された極秘資料から、目が離せない。乾いた唾を無理やり飲み込み、呼吸までそっと整える。

中島剛志は両手を重ね、杖に軽く体重を預けていた。

しんと静まり返ったリビングを一周見渡し、鋭い視線が最後に菅田英樹へ突き刺さる。

「菅田さん」

中島剛志はわずかに眉をひそめ、遠慮のない疑問をそのまま口にした。

「わしら年寄りがここでいくら議論しても、肝心の菅田くんが姿を見せない。こんな大事な場面で当人不在では、わしらが一人芝居をしている...

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