第88章 大貴を救った

空気が、この瞬間、死んだように凍りついた。

リンクスは反射的に腰の拳銃へ手を伸ばし、冷や汗が背中を一気に濡らす。

この小娘――主様の正体を、最初から見抜いていたのか。

菅田承吾は、少女の冷ややかで傲岸な顔をじっと見つめた。やがて、正体を暴かれた苛立ちなど微塵も見せず、喉の奥で低く笑う。静まり返った個室に、胸の震えがやけに鮮明に響いた。

「観察眼は悪くないな」

菅田承吾はグラスを無造作にローテーブルへ置き、立ち上がる。すらりと伸びた体躯が、無視できない圧となって迫ってくる。ゆっくり、確実に、菅田美波へ。

男はわずかに身を屈め、彼女の背後の床まで届く窓ガラスに両手をついた。逃げ道を塞...

ログインして続きを読む