第1章

 ドリアン・ファルコにとっての禁忌——逆鱗とも呼ぶべき存在。義妹であり、そして誰にも明かせぬ愛人でもあるカミラが、容赦なく踏みにじられた。

 ファルコ家の護衛がスラムの路地裏でカミラを見つけたとき、彼女はまるで壊れた布人形みたいに、汚水溜まりに倒れていた。

 裂けた衣服は泥と絡みつき、肌にべったりと貼りついている。懐中電灯の冷たい白光がなぞった瞬間、全身に残る無数の乱暴な指の痕、噛み痕、そして凄惨な青あざがあらわになった。

 この街を片手で覆い隠すほどのマフィアのゴッドファーザーは、完全に壊れた。

 怒りに駆られたドリアンは私の腕を引きずり、屋敷の地下牢へ放り込み、「車輪刑」を命じた。

 ファミリーの中でも最下層の構成員を十数人。彼は私をそいつらに投げ与え、止むことのない鞭と暴力で、私が生きたまま裂かれていくのを許した。

「カミラが受けた苦しみ——その何百、何千倍で返してもらう」

 私は冷たいコンクリートに這いつくばり、彼のズボンの裾を必死に掴んで泣きながら懇願した。私はあなたを愛している、どうしてあなたがいちばん大切にしている人を傷つけられるはずがあるの、と。

 返ってきたのは、ドリアンの冷えきった嘲りだけだった。

「なんだ? カミラが俺の『本当の愛』を手に入れたのが妬ましくて、下層のクズどもを雇って身体を汚したのか?」

 彼は乱暴に私の顎を掴み上げる。灰青色の瞳に宿るのは、むき出しの殺気。

「そんな汚い遊びが好きなら、望みどおりにしてやる。お前はあいつより汚く、あいつより卑しくなれ」

 血の臭いの残る地下牢に、私は七日七夜、鎖で繋がれた。

 ボスの特別許可を得た血塗れのならず者どもは、革ベルトや鉄鎖で私の背骨を打ち据え、ためらいもなく私を踏みにじった。暗闇の中で私は喉が裂けるまで叫び、もがき、赦しを乞うた。

 傷は湿った空気の中で次々と化膿し、流れた血は粗い床の隙間へ染み込んでいく。

 七日目。シチリア島の私邸で療養していたカミラを連れて戻ってきたドリアンは、そのときようやく思い出した。法的な妻が、まだ地下牢にいることを。

「カミラが今日はやっと起き上がれた。運がよかったな、サーシャ」

 重い鉄扉の外から、彼は見下ろすように告げた。声には施しを与えるような傲慢さが滲んでいる。

「今すぐ這い出てこい。犬みたいにカミラの足元に跪いて、靴の先に口づけして償え。そうしたら慈悲でその安い命だけは助けてやる」

 沈黙。返事はない。

 彼は知らなかった。三日前の時点で、私はもうこの牢で、生きたまま嬲り殺されていたのだということを。

 ドリアンはカミラの腰を抱き寄せたまま、ファルコ本邸へ足を踏み入れた。冷えた広間の静けさに、彼の眉が本能的に寄る。

「サーシャはどこだ?」

 苛立たしげにネクタイを引き抜く。

「どこでくたばってやがる。戻るまで玄関で待てって言っただろ。奥様らしく、ちゃんと出迎えの準備をしておけって」

 ボスの怒りが噴き上がる気配に、幹部が震えながら一歩前へ出た。

「ボス……お忘れですか。奥様は地下の牢に……もう七日になります」

 ドリアンは数秒、言葉を失い——それから一週間前の出来事を思い出した。

 その日、カミラは警護もつけないまま市中心部の買い物街で忽然と姿を消し、一晩戻らなかった。翌朝スラムで見つかった彼女は、衣服もまともに残っておらず、下衆どもの蹂躙の痕が身体中に刻まれていた。

 ドリアンは心を砕かれたように彼女を抱き締め、グロックを握る指の関節を白くさせた。

「カミラ、もう大丈夫」

 額に口づけ、氷のような声で囁く。

「兄さんに言え。誰がやった?」

 カミラは泣きながら彼の胸にすがりつき——震える指先だけが人垣を越え、熱い茶を載せたトレイを持ち、心配そうにこちらを見ていた私をまっすぐ指した。

「……あの人。サーシャ……」

 荒唐無稽な告発が、鉄槌みたいに私の心を叩き割った。

 私は狼狽して膝をつき、助けを求めるように涙を浮かべた。

「違う……私じゃない! ドリアン、あなたは知ってるでしょう。私はあなたを愛してる。どうしてあなたを悲しませるようなことができるの? お願い、信じて……!」

 這い寄って手を取ろうとした瞬間、彼は汚物でも避けるみたいに身を引いた。

 顔色が一気に暗く沈む。

「カミラは生まれつき善良だ。虫一匹殺せないし、嘘もつかない。サーシャ、お前みたいな蛇のように冷たい毒婦は、カミラを壊し尽くさないと気が済まないのか?」

 血の気が引き、全身が冷たくなる。三年間、私は必死に彼を愛した。従い、耐え、折れてきた。それが彼の目には、何の価値もないものだったのだ。

 ドリアンは私を蹴り倒し、続けざまに頬を何度も叩いた。口の端が裂け、血の味が広がる。

 激昂した彼は私を地下へ引きずらせ、屈強な清掃係と下っ端の打ち手を十数人集めた。

「カミラが受けた目に、お前も自分で遭え」

 私は絶望のまま床に跪き、腹をかばって尊厳を捨てた。

「妊娠二か月なの、ドリアン……お願い、子どものために……一度でいいから、話を聞いて……」

 けれど私は、致命的な事実を忘れていた。この政略結婚は権力の駆け引きにすぎない。ドリアンは私を愛していない。私の腹の中にいる跡継ぎなど、気にも留めていない。

 彼の口元に残酷な笑みが浮かぶ。革靴が私の肩を踏みつけ、土埃の中へ押し潰した。

「サーシャ。キャラハン家のクズの血を引く女に、ファルコの跡継ぎを産ませるとでも?」

 冷たい嗤い。視線はゴミを見るようだった。

「それに、あんな下劣な手で俺のベッドに潜り込んだ女だ。腹の中の出来損ないが誰の種かなんて、わかったもんじゃない」

「カミラが俺のすべてを賭けた愛を手に入れたのが妬ましくて、わざと汚したんだろ。なら地獄を見せてやる。こいつを牢に入れろ。俺の命令なしに、誰も出すな!」

 重い鉄扉が叩きつけられ、鍵が回る。陽の差さぬ地下室は、その瞬間から私の地獄になった。

 男たちは報奨金を手にして、遠慮という鎖を外した。獣みたいな目が、ねっとりと私に貼りつく。

 ベルトが唸り、骨が折れ、理性のない蹂躙が続く。暗闇の中、私は叫び、もがき、惨めにドリアンの名を呼んで助けを乞うた。けれど外から返ってくるものは何もない。

 私の瀕死の抵抗は、暴徒たちの笑い声をいっそう高くするだけだった。

 時間が流れるほど激痛は鈍い麻痺へ変わり、無数の傷は膿んで腐っていく。命がけで守った下腹の中で、私の卑しい恋の象徴だったはずの無垢な命もまた、どろりとした死血になって、太腿の付け根を伝ってゆっくりと流れ落ちた。

 血はコンクリートの隙間へ染み込み、牢の床を赤く染める。

 そして四日目の深夜。重い鉄扉がきい、と音もなく押し開けられた。

 暗闇の中、誰かがざらついた麻縄を私の首に回し——ぎり、と容赦なく締め上げた。

 首がごきりと鳴る乾いた音がして、私はそこで、息を完全に止めた。

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