第159章

桜は連れ去られる高橋玲を追おうとしたが、夏川風に腕を掴まれ引き止められた。

夏川は片手で電話を耳に当て、もう片方の手で桜を制しながら告げる。

「すぐに三階のエコー室前に来てくれ。揉め事だ」

通話を終えると、夏川風は冷ややかな視線を目の前の二人組に向けた。

「さっさと失せろ。警備員が来たら、ただじゃ済まないぞ」

これは妊婦へのせめてもの情けだったが、女は身をよじり、少し膨らんだ腹を突き出して叫んだ。

「何様のつもり? この病院はあんたの持ち物とでも言うの? なんで私たちが帰らなきゃいけないわけ? それにあの泥棒猫、逃げるなんていい度胸ね! 私の夫をたぶらかしておいて、よくも被害者ぶ...

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