第162章

藤原時夜は小田との電話を切ると、無意識に右手の親指で人差し指の関節を摩った。彼が考え事をする時の手癖だ。

検診以来、高橋玲に対する心の壁が、随分と後退したのをはっきりと感じていた。

彼女が大人しく言うことを聞くなら、このまま飼ってやってもいい、とすら思い始めていたのだ。

だが、高橋玲のあの憎悪に満ちた眼差しを思い出し、藤原時夜は拳を強く握りしめ、苛立ち紛れに立ち上がった。

窓辺まで歩き、煙草に火をつける。

紫煙が漂うにつれ、彼の心も次第に落ち着きを取り戻していった。

――コン、コン。

「藤原社長、私です」

ドアの外から夏川風の声がした。

藤原時夜は視線を落としたまま、平坦な...

ログインして続きを読む