第172章

黄昏時、建物の三階にある個室。

ソファには二人の男が腰を下ろしていた。一人は極めて若く、派手な赤髪に、首筋から刺青をちらつかせている。

彼は苛立ちを隠そうともせず、腕時計に目を落とした。

「爺さん、あの女はいつ来るんだよ? すっぽかして帰っちゃダメなのか? わざわざ出向く必要ねえだろ」

「爺さん」と呼ばれた老人は、齢八十に近い。白髪に皺だらけの顔だが、その双眸には狡猾な光が宿っている。

孫の短気さに、黒川勇儀は余裕の笑みを浮かべた。

「何を急くことがある。高橋家の小娘だぞ。会ったこともあるだろうに」

黒川勇儀が高橋玲の祖父母と共に汗を流していた頃、玲はまだ生まれてさえいなかった...

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