第173章

「サインなんかするかよ!」

黒川渚は高橋玲が差し出した契約書を手の甲で払いのけた。その声色には、隠しきれない侮蔑が滲んでいる。

「会社の事業で赤字が出るなんて日常茶飯事だ。そんなネタで俺たちを脅せると思ってるのか? 考えが甘すぎるんだよ!」

バラバラと紙片が床に散らばる。温厚な鈴木柊でさえ、そのあまりの暴挙に拳を震わせていた。

かつて高橋明美があれほど心血を注いで守り抜いた会社だ。それをこんな連中に食い物にされ、後ろ盾のない高橋玲は藤原グループからも理不尽な扱いを受けてきた。

二人の恩知らずどもめ。千回殺しても飽き足りない。

「高橋さん。今日、私のような老骨を呼び出したのは……過...

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