第213章

また自分を無視し、あの犬を抱いて茂みから出ていく彼女の背中を見て、藤原時夜の顔色が冷たく沈んだ。

「高橋玲、そんな汚らしいもの、連れてきてどうするつもりだ」

その野良犬は毛並みがまだらに濡れており、足の裏には泥がこびりついている。高橋玲が抱きかかえたせいで、白い綿入りのコートには泥汚れがべっとりと付いてしまった。

単に汚いから嫌悪しているだけではない。何より気に障るのは、高橋玲が妊婦であるという事実だ。万が一、この犬が何か病気でも持っていて、彼女に感染させたら厄介なことになる。

「藤原時夜、少しは冷血なところを直せないの? これは汚いものじゃないわ。一つの命よ。それに、あなたに抱っこ...

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