第56章

会社の仕事もほぼ片付いたため、高橋玲はこれ以上会社に留まることなく、早々に帰宅した。

ここ数日は会社に行くつもりはない。彼女がいなければこそ、あの連中も動き出すだろう。

今の彼女がすべきことは、ただ魚が餌に食いつくのを待つことだけだ。

彼女が家に籠っていることに桜は当然喜んでいた。

最近、高橋玲は仕事に追われ、すっかり痩せてしまった。しっかり栄養を補充してあげなければ。

高橋玲は傍らでハイハイしている亜規ちゃんを見て、思わず尋ねた。

「どうして彼がまだここにいるの?お母さんは?」

この綿川恵美は本当に自分の子を大事にしているのだろうか?会社を取り戻したと言っておきながら、実は遠...

ログインして続きを読む