第57章

藤原時夜が近づいた時にはすでにその光景が目に入っていた。この男はもともと目障りな存在だった。

しかも高橋玲は自分が連れてきた相手のはずなのに、堂々と舞踏相手がいないなどと言うとは?

それが藤原時夜の怒りをさらに煽った。彼は前に出て高橋玲の手首を掴み、自分の胸元へと引き寄せた。

「申し訳ないが、彼女は私の同伴者だ」

藤原時夜は業界では非常に有名で、その場にいる全員が彼を知っていた。

男は自分が目をつけた女性が彼の女だったとは思いもよらず、すぐに謝罪の言葉を口にした。

「申し訳ありません、藤原社長。無礼をお許しください、本当に申し訳ありません」

そう言うと、男はまるで逃げるように立...

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