第106章 文哉に何かあった

「杏璃、お前は本当に勇敢だ。お前はな、俺が何十年も『やりたい』と思いながら、結局できなかったことをやったんだ」

岩崎爺さんは拳を握りしめ、悔しさを噛み殺すように続けた。

「もしあのとき俺も、くだらねえ面子なんて捨てて、あのクソジジイを思いきり罵ってやれてたら……こんなところまでこじれなかった」

言い終えるころには、岩崎爺さんはふっと笑っていた。

笑ったはずなのに、目尻にはきらりと涙が滲む。

これまでの忍耐が、急に馬鹿らしく思えたのだ。

許しなんて、心から悔い改める人間にしか効かない。

熊元爺さんみたいな性根の腐った相手に向けるのは、ただの浪費だ。

杏璃は岩崎爺さんの様子を見て...

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