第111章 彼はもともと私を考慮する必要がない

「大変なことになった」

西川結人の声は沈んでいて、耳を澄ませば奥に押し殺した怒りが滲んでいる。

西川結人がこうなる以上、些細な話のはずがない。

杏璃はスマホを握ったまま玄関へ向かった。

「何があったの。今から会社に戻る」

「焦るな。今日は家で休め。明日でいい」

西川結人はため息をつく。

「もう決まったことだ。今来たって、できることはない」

「……結局、あのプロジェクトの件?」

杏璃はスマホを握る指に力を込めた。

最近は、夜遅くまで必死に残業していた。少しでも早く仕上げて、面倒が起きる前に片づけたかったのに。――それでも、間に合わなかった。

「熊元家の連中だ」

西川結人...

ログインして続きを読む