第145章 大原晴樹が酔っ払って杏璃のところへ行く

左手にグラスを持ち、ゆらりと酒を揺らす。けれど視線だけは、ステージ中央の人物から一瞬たりとも外れなかった。

杏璃は今日、黒のミニスカート。髪はきちんとセットしたわけでもないのに、妙に艶やかで指通りがいい。ステージのど真ん中に立ち、派手な身振りも表情もほとんどない。それなのに、歌声だけが感情が滲み出るようだった。

小池慶人は思わず見惚れてしまい、ソファに座る大原晴樹がこちらを睨むように見ていることにも気づかない。あの目は明らかに、穏やかじゃない。

隣の福島孝介は小池慶人の様子に気づいたらしく、眉を上げて覗き込む。

「何見てんの? そんな真剣に……まさか杏璃?」

「へえ。お前が杏璃に興...

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