第152章 熊元友里絵の匂いだ

コートを羽織って階段を下りると、岩崎蘭子がリビングの中を落ち着きなく行ったり来たりしていた。顔色は真っ青で、今にも泣き出しそうだ。

「お母さん、どうしたの」

「杏璃、やっと起きたのね……文哉がいないの。今朝早く、起こそうと思って部屋に行ったら、ベッドが空っぽで……使用人たちにも探させてるのに、まだ見つからないのよ」

「昨夜は、私がちゃんと部屋に入るのを見たよ。なのに朝になったらいないなんて、どうして……」

蘭子の声は震え、喉の奥で泣き声が絡んでいる。けれど杏璃は、妙に落ち着いていた。

文哉はまだ幼いとはいえ、頭の回転が早い子だ。しかもここは岩崎家の別荘。誰かが気づかれずに連れ去るな...

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