第17章 婚約の贈り物、いらない

その一瞬の揺らぎを、熊元友里絵と大原美緒は見逃さなかった。二人とも、杏璃が未練を滲ませたのだと思い込んだのだ。

――これから取り乱す。泣きわめく。みっともなく怒る。

そんな顔を、彼女たちは待っていた。

けれど杏璃は、二人の期待をあっさり裏切った。

彼女は彫刻のように繊細なクリスタル・ローズへ、淡く視線を投げるだけだった。長いあいだ触れていなかったのだろう。表面には薄く埃が積もり、かつての眩い輝きはもうない。

「なんで二人とも、私のこと見てるの?」

杏璃は平然と言った。

「欲しいなら持っていけばいいじゃない。ゴミみたいなもの、置いといても邪魔なだけだし」

熊元友里絵の表情が、ぴ...

ログインして続きを読む