第173章 彼女の家の隣に引っ越す

「忙しいんだろうな」

大原晴樹は文哉の頭をくしゃりと撫でた。

「いったん家に帰って待とう。少ししたら、またママのところに来よう」

「うん」

文哉は素直に頷き、大原晴樹の手を握って帰ろうとした。だが玄関を出て数歩も行かないうちに、少し離れたところから――ドンッ、と鈍い音が響いた。

重たいものが床に落ちたような、嫌な音。

文哉が眉をひそめる。

「パパ、今の音……ママの部屋からじゃない?」

問い終える前に、大原晴樹は風のように駆け出していた。杏璃の部屋の前まで一気に詰め、ドアを蹴り開ける。

杏璃はソファから床へ転げ落ち、身体を小さく丸めていた。顔色は紙みたいに白く、汗で全身がぐっ...

ログインして続きを読む