第18章 人違いだった

車は夜の街を猛スピードで駆け抜けていった。

杏璃は助手席に座っている。ハンドルを握っているのは大原晴樹だ。

考えてみれば、結婚してこの五年、彼の隣――助手席に座った回数など、指で数えられるほどしかない。まして大原晴樹が自分で運転するとなれば、ほとんど記憶にないくらいだ。

一年前なら、いや、半年前でさえ、杏璃はきっと浮かれていた。

けれど今の彼女の頭は、氷みたいに冴えている。

「私と話がしたいの?」と杏璃は訊いた。

「……あのクリスタルの置物、取ってある」

大原晴樹は前だけを見たまま、声も淡々としている。

「欲しいなら、あとで使用人に届けさせる」

「ああ、あれね。どう処分して...

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