第19章 彼女は怒らないのか?

声を聞いた瞬間、福島孝介はぽかんと固まった。

熊元友里絵とは付き合いも長い。あの人の声なら、目を閉じていても分かる。ふわりと柔らかく、優しく囁くような――そういう声だ。

けれど、今聞こえたのは違った。冷たく硬い。それに、少しかすれている。

……人違いか。

福島孝介は頭をかき、気まずそうに車内へ「すみません」の身振りをした。それから助けを求めるように大原晴樹へ視線を投げる。

「えっと……こちらの方は……」

大原晴樹は答えない。ただ一度、福島孝介を見た。その一瞥だけで十分だった。

福島孝介は察して、顔がみるみる引きつる。

――やばい。

大原晴樹の奥さんを、熊元友里絵だと思い込ん...

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