第25章 招待状がない

熊元友里絵が出ていったあと、大原晴樹は指の関節を眉間に当て、しばらく沈黙した。結局、内線で秘書を呼ぶ。

「奥様に伝えてくれ。週末の温泉の予定は取りやめだ」

自分でも意外だった。

これまでみたいに、胸を張って一方的にキャンセルできない。

面倒な揉め事を避けたいだけなのか。

それとも……彼女が何も言わなくなるのが、嫌なのか。

大原晴樹だって分かっている。この結婚は、どこかがおかしくなっている。

それでも続けられるなら続けてしまえばいい。

薄い膜みたいな「普通」を張って、自分に言い聞かせるのだ――何も問題はない、と。

土曜。陽射しはやけに明るかった。

杏璃は早起きして、丁寧に身...

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