第29章 離婚協議書

杏璃が家に戻ると、大原晴樹はすでにリビングのソファに腰を下ろし、彼女を待っていた。

隣には熊元友里絵。二人の距離はやけに近い。

近づいた杏璃の視界に、テーブルの上の束が入る。ホチキスで綴じられたA4の書類――表紙には「離婚協議書」とある。

杏璃に気づくと、二人の視線が同時に向いた。

杏璃は軽く会釈し、大原晴樹の向かいに座る。

「来たか」

大原晴樹の声は淡々としていた。顎で書類を示す。

「目を通せ。問題ないなら署名しろ」

杏璃は束を手に取り、ざっと読む。最初に書かれていたのは文哉の親権が大原晴樹にあること。そこに異論はない。

続くのは財産分与。何ページにもわたって細かく列挙さ...

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