第30章 離婚協議書に署名する

食卓の空気が、微妙にすっと固まった。

杏璃がそれに気づいたのは少し遅れてからで、熊元友里絵と大原晴樹が、意識的なのか無意識なのか、じっと自分を見ているのが分かった。

……何だろう。よく分からない。

「熊元さん、そんなに見てどうしたんですか? まさか私が毒でも盛ったって疑ってるとか?」

そう言いながら、杏璃も同じようにスープを一杯よそい、ゆっくり口に運ぶ。

友里絵は少し気まずそうに視線を泳がせた。

「違うの、そうじゃなくて……杏璃さん、お料理が本当に上手だから。これ、どうやって作ったのか教えてもらえないかなって。今度、私も子どもに作ってあげたいの」

“子ども”とだけ言って、文哉な...

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