第44章 私は妊娠した

「私が身につけるものを、安っぽいだなんて思う人はいない」

大原晴樹は指輪をチェーンに通すと、自分から首にかけた。

熊元友里絵は心底うれしそうに笑う。

「晴樹、こんな意味のないことに付き合ってくれてありがとう」

「晴樹の時間がどれだけ貴重か、知ってるよ。1秒だってお金に換算できるんでしょ。でも、もっと一緒にいてほしいの」

「君といるのは、意味がないなんてことはない」

大原晴樹の声は、杏璃がこれまで聞いたことのないほど柔らかかった。ぼんやりした瞬間、ナイフが指先をすっと切り、杏璃は顔色を変えて席を立つ。トイレで手当てをした。

絆創膏を貼って戻ろうとした、そのとき――振り向いた視線の...

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