第50章 君たちはこのベッドで寝たことがあるのか

「大奥様はまだ記憶が戻っていなくて、文哉様のこともご存じありません。若様が『文哉は友だちの家に行かせた』と――」

杏璃は、ちっとも驚かなかった。

さっき別荘へ戻る途中、文哉から電話があった。受話器の向こうには熊元友里絵の声も混じっていたし、おそらく大原晴樹は文哉を熊元友里絵のところに預けたのだろう。

杏璃が別荘に入ると、大原婆さんがすぐににこにこと迎えに出てきた。

「杏璃ちゃん、やっと帰ってきたねぇ」

そう言いながら、外へ視線を伸ばす。

「晴樹は? 一緒じゃないのかい?」

「まだ残業で仕事してます。手が片づいたら戻ってきますよ」

「そうそう、それでいい。それじゃ家で待とうね」...

ログインして続きを読む