第56章 服を着てから出てこい

大原晴樹は薄く笑った。

「それ、君が俺に聞くのは初めてじゃない」

前にも――大原婆さんのブレスレットを返してほしいと言い出したとき、彼女は同じように「代わりに何を差し出せばいいのか」を気にしていた。

「どうしても何か払いたいなら、おばあちゃんの前で“いい子”を演じてやってくれ。少しでも機嫌よくさせる、それで十分だ」

「……それだけ?」

杏璃は、にわかには信じられなかった。

熊元友里絵が流産したというのに、こんなに簡単に見逃されるなんて。

「じゃあ、他に何がある?」

大原晴樹はそれだけ置き捨てるように言い、踵を返して去っていった。

――翌朝。

杏璃のスマホが鳴った。西川結人...

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