第63章 金を出した者勝ち

杏璃はよく分かっていた。岩崎蘭子だって、好きでこうしているわけじゃない。けれど彼女は、父に守られすぎた前半生を送ってきた。だから父を失うことも、父が築いたものが崩れていくことも、受け入れられないのだ。

胸の奥に、じわりと力の抜けるような感覚が広がった。

もし岩崎蘭子が、大原晴樹や文哉と同じで――いつだって自分だけが一方的に尽くす関係なら、杏璃はとっくに見切りをつけて、すぱっと離れられた。

けれど、杏璃の最初の二十年は、岩崎蘭子の細やかな愛情に包まれて育った時間でもある。

愛と憎しみが絡み合うこの感情を、簡単に手放せるはずがなかった。

「杏璃、約束する。これが本当に最後よ」

岩崎蘭...

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