第68章 記憶が蘇る

スマホを握る指先が白くなる。杏璃はもう一度、確かめるように言った。

「おばあちゃんも高橋さんもいないし、よく使ってた物までなくなってて……おばあちゃん、もしかして――」

「考えすぎるな」

その短いひと言で、杏璃の胸の動揺がすっと引いた。

杏璃は知っている。大原晴樹が、大原婆さんのことを冗談にするはずがないと。

「おばあちゃん、記憶が戻った。実家に帰ったんだ」

「……びっくりした」

杏璃は大きく息を吐く。

「じゃあ、電話してみるね。切るよ」

返事を待たず、きっぱり通話を切った。続けて大原婆さんにかけ直す。

ほとんど秒でつながった。

「杏璃? 仕事終わって、もう家に着いたの...

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