第72章 他人の刀になるな

すべて片づけると、杏璃は客たちの前へ歩み出た。

「申し訳ありません。ホテル側で少しトラブルがありまして、皆さまには車内でしばらくお待ちいただけますでしょうか。およそ三十分ほどでご案内できます」

杏璃の声は落ち着いていて、媚びも怯えもない。

「もちろん――岩崎家の笑いものを見に残っている方がいるのなら、先に申し上げておきます。岩崎家に、あなた方へ見せる笑いものはありません」

「そういうおつもりの方は、お帰りください。こちらとしても歓迎しません」

誰に向けた言葉か、皆わかっていた。

客たちは空気を読んだように車へ戻って待機したが、篠原社長たちだけはその場を動かない。こそこそと言葉を交...

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