第93章 離婚協議書に署名する

杏璃はこの瞬間になって、そういえば大原泰介が自分のことを「姉さん」と呼ばなくなって、ずいぶん経つのだと気づいた。

「酔ってるの? 西川結人はそばにいる?」

『もう運転手に拾われたよ』

大原泰介がくすりと笑う。

『おめでとう。ようやく離婚できるな』

「その話は明日会ってからにして。まず運転手さんに頼んで、酔い止めを買ってもらって。それからちゃんと家に帰って休んで」

杏璃は真面目な声で言った。

『俺のこと心配してくれてんの? うれしいなあ』

大原泰介は歯を見せて笑う。

『うれしいのは、心配してくれたからってだけじゃなくて……』

そこまで言って、ふっと言葉が途切れた。

窓から...

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