第10章
透哉視点
『愛莉、すまない。本当に、何もかも。でも、俺のせいで君を死なせるわけにはいかないんだ』
「確認」と、俺は途切れ途切れの声で言った。「記憶の削除を実行してください」
『記憶再構築プロトコル、起動。選択的ニューラルパスの削除を開始……』
俺の周りのスクリーンが、次々と消去されていく愛莉の記憶で明るくなった。俺たちの最初の出会い、俺があのネックレスを贈った彼女の十七歳の誕生日、彼女が俺の大学願書の準備を手伝ってくれた夜、彼女が星形のパンケーキを作ってくれた朝。
その全てが、削除されていく。その全てが、永遠に消えていく。
『削除率五〇パーセント完了。被験者の意識、...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章

5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章

10. 第10章


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