第5章

愛莉視点

十二月十六日、午前九時。コーヒーショップの中は暖かくて、本当に良かった。もう二時間も寒い中を歩き回っていたのだ。

店に入ると、大輔はもう来ていた。隅のボックス席に座り、コーヒーカップが二つ置かれている。私に気づくと、彼の顔は真っ白になった。

「大丈夫かい、愛莉。ひどい顔だぞ」彼は椅子を倒しそうになるくらいの勢いで立ち上がった。「一体何があったんだ? ちゃんと寝たのか?」

私は彼の向かいの席に崩れるように座り、震える手でコーヒーカップを掴んだ。「どうでもいい。仕事の話があるって言ってたよね?」

「おい、愛莉。あいつに何をされたんだ?」

「仕事の話よ、大輔。そ...

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