第7章
透哉視点
頭が張り裂けそうだった。二つの記憶が脳内でせめぎ合っている。一つは、愛莉が自己中心的で残酷だという記憶。そしてもう一つは……もう一つは……。
『待て。もう一つの記憶って、なんだ?』
別の記憶が、俺の中に叩きつけられた。俺と愛莉が、家の裏にある湖のほとりに座っている。彼女が十七歳で、俺が十九歳。俺の肩に頭を乗せ、彼女は柔らかく、確信に満ちた声で言った。「いつだってそばにいるよ、透哉。何があっても」
『彼女の笑顔。ああ、あの笑顔を覚えている』
「ずっと一緒にいるって言ったんだ」俺は囁いた。声はひどくかすれていた。「俺を愛してるって」
「ああ」大輔が言った。「そ...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章

5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章

10. 第10章


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