第9章
透哉視点
震える手を無理やり押さえつけ、込み上げてくる怒りをねじ伏せる。芝居を続けろ。愛莉を諦めたと信じ込ませるんだ。それしか方法はない。
「君と一緒にいてもいい」俺は言った。
「やっと分かってくれたのね?」英玲奈の声は満足感に満ちていた。彼女は椅子に背を預け、指にはめたリングをくるくると回す。「いつかは私を選んでくれるって信じてた。ここでなら、私たちは永遠に幸せになれるのよ、透哉。あなたと私、二人きり。もう痛みなんてない」
俺は自分を奮い立たせ、制御装置へと一歩近づいた。「……そうかもしれないな。愛莉なんかのために、こんなに苦しむ価値はない」
英玲奈の目が輝いた。「そ...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章

5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章

10. 第10章


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