第9章

【江里花視点】

 父であり、賢也の三十年来の親友でもある白野淳一は今、秘蔵のウイスキーボトルを二本提げたまま、目を丸くして私を見つめていた。

 私の乱れた髪を。

 あらわになった両脚を。

 そして、シャツの襟元にびっしりと残された、目を覆いたくなるような生々しいキスマークと歯型を。

 ゴトッ。

 分厚い絨毯の上に落ちたウイスキーを、父は拾うことすら忘れていた。

――終わった。

――完全に、終わった。

――父の数十年来の親友に手を出した挙句、よりによって実の父親に現行犯で取り押さえられてしまったのだ。

「お、お父さん……」声が震える。

「お父さん……どうして……だって、今...

ログインして続きを読む