第10章

 サーキットの観客席は熱気に満ち、練習走行だというのに、ファンたちは驚くほどの熱狂ぶりを見せていた。

 私は橘純司が残してくれたスタンドのチケットを手に、ごった返す人混みを抜けていく。彼はチケットをくれただけでなく、スタッフを手配して、一般の観客では入れないエリアへと案内してくれた。

「葵野様、こちらへどうぞ」

 サーキットのユニフォームをまとった若い女性スタッフが軽くお辞儀をし、私を最高の観戦スポットへと導いてくれる。

 私は最前列に腰を下ろした。周りは満席だ。

 レーシングカーの咆哮が鈴鹿サーキット全体に響き渡り、エンジンの轟音が私の胸の内で震える。

 星野澪が駆るマシンがス...

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