第4章

 恵理子視点

 フライパンに卵を割り入れる。白身がじゅうと音を立てて広がっていくのが見える。背後ではコーヒーメーカーがごぽごぽと音を立てている。トーストが、きつね色に焼けてぽんと飛び出した。何もかもが普通。何もかもが完璧。何もかもが、偽物。

 階段を降りてくる足音。真が現れる。シャワーを浴びたばかりで、髪はまだ湿っている。

 「おはよう、恵理子。いい匂いだね」

 私は振り向かない。ただ、卵から目を離さない。

 「ただの朝食よ。特別なものじゃない」

 彼は後ろから私の腰に腕を回す。唇が、首筋に触れた。

 「なあ、今日は一日中会議なんだ。でも、今夜は一緒にディナーにしよう。七時でど...

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