第5章

 真は四十七階のオフィス、デスクの後ろに座り、虚空を見つめている。しわくちゃのスーツのジャケットが椅子にかかっていた。ワイシャツの襟は開けっ放しだ。二日間、髭も剃っていない。五通の私立探偵の報告書が、マホガニーのデスクの上に散らばっている。どれもこれも書いてあることは同じだ。――成果なし。

 携帯が鳴る。画面に『桜子』の名前が光った。

 「神崎さん、奥様の出入国記録が保護されています。銀行口座に不審な動きはなく、携帯のGPSは完全に途絶しています」

 「ブロックだと? どこのどいつにそんな権限があるんだ」

 「文部科学省認可の国際共同研究プロジェクトです」

 学術機関。

 真は勢...

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