第10話

和也の前で正体を明かしたくなくて、私はしきりに蓮へ目配せをした。

「ユリって、何のことですか?」

わざと戸惑ったような顔を作り、不思議そうに彼を見つめて口を開く。

私の表情を見て、和也は端正な眉をひそめた。探るようなその目は、まるで私の内面をすべて見透かそうとしているかのようだ。

ちょうどそのとき、蓮が歩み寄ってきた。

「藤原さん、こちらは……」

「藤原の妻です」

蓮が紹介する隙を与えず、私は言葉を遮った。

私の不自然な振る舞いに、蓮は訝しみながらも話を合わせてくれる。

「初めまして」

私が意図的に話を逸らそうとしたにもかかわらず、和也は自ら問い詰めてきた。

「西園寺さ...

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