第51話

断ろうとしたその時、梨乃に肩を押され、私はバッグごと悟の胸に飛び込みそうになった。

彼女は興奮した面持ちで私にウインクをする。

「葵、行っちゃいなよ。せっかくの息抜きなんだし、しかもイケメンからのお誘いだよ? 思いっきり楽しんでくればいいじゃん」

「楽しむ」という言葉に、以前彼が大金をはたいてホストを呼んでくれた時のことが脳裏をよぎる。

あの時はたしかに楽しかったし、湯水のようにお金が消えていった。

とはいえ、その「楽しむ」という行為自体、私にとっては完全な苦痛でしかなかったけれど。

相手が悟になったところで同じことだ。私は、好意と興奮を隠そうともしない彼に振り返り、容赦なく冷や...

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