第56話

「本人が連行されたのに、ここで嫌味を言ったところで何になるの?」

私は帰るように促した。

「藤原さんの力があれば、彼女を連れ戻すくらい簡単なことでしょう? ここで時間を無駄にしていていいの?」

「私はもう仕事に戻るけど、藤原さんはここに残って見学でもしていくつもり?」

和也はギリギリと歯を食いしばり、立ち去り際に強い憎悪を込めた目で私を睨みつけた。

「今に見てろよ」

私は胸の前で腕を組み、彼の脅しなど全く意に介さなかった。

一部始終を見ていた晴美が、たまらず心配そうな声を上げる。

「葵、彼に報復されたりしない?」

不安げなその表情から、彼女が私の身の安全だけでなく、和也から...

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