第62章

和也が息を呑む音が、時折耳元で聞こえる。それは彼が怒り出す前兆だ。

だが、今の私はもう彼の所有物ではない。彼が怒ろうが怒るまいが、私には何の関係もないのだ。

明日の夜、会社で待ち伏せなどしないでほしい。同僚に笑い者にされるのはご免だ。

翌朝、会社に出社すると、案の定、寧々は来ていなかった。

ほっと息をつく。おそらく終業後に退職手続きをしに来て、ついでに同僚たちに送別会の話でもするのだろう。

ようやく定時になり、さっさとずらかるつもりだったのに、運悪く入り口で和也に立ち塞がられた。

彼は体を斜めにして開いたドアを塞ぎ、探るような視線を向けてきた。

「どこへ行くつもりだ」

私は深...

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