第74章

その夜。帰宅してシャワーを浴びようとした矢先、不意にスマホが鳴った。

画面に目を落とし、私はすっと真顔になる。

お祖母様からだった。

少しの沈黙のあと、結局は通話ボタンをタップした。

藤原家にいた頃、お祖母様にはずいぶんと目をかけてもらったからだ。

今は体調を崩していると聞く。そんなお年寄りを無下に扱うことなど、到底できなかった。

「お祖母様」

私は声を和らげ、自分から呼びかけた。

「葵さん」

スピーカー越しに響く慈愛に満ちた声は、よく聞くと少し弱々しく、疲労が滲んでいた。

「あなたも和也も、ずいぶんと顔を見せてくれないわね」

「明日の夜、実家へいらっしゃい。一緒にご飯...

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