第91章

部屋の真ん中に立ち、私は手にしていた双眼鏡をゆっくりと下ろした。

ドアが押し開かれる。薄暗い照明の中、武市克好の視線が私を捉えた。

「なぜ、ここにいる?」

武市克好が地を這うような低い声で尋ねる。

私は表情を崩さず、部屋の明かりを点けた。光に照らされた自分の顔に微かな嘲笑を浮かべ、言い返す。

「じゃあ、どこにいると思ってたの?」

「まさか、車でハッカーを追いかけているのが私だとでも?」

武市克好の顔から焦りの色がすっと消え、不気味なほどの落ち着きを取り戻した。

彼は自嘲気味に笑い、複雑な眼差しを私に向ける。

「葵、お前は本当に大人になったな」

「昔はあんなに純粋で、いつも...

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