第7章
楽屋の化粧鏡の前、私はぽつんと一人で座り、黄金に輝く映像大賞のトロフィーを両手で大切そうに抱えていた。
譲司がドアを押し開けて入ってきた。「今夜は勇敢だったね。君を誇りに思うよ」
鏡越しに彼を見つめると、複雑な感情が胸にこみ上げてくる。この人――いつから私の心の中で、こんなにも大きな存在になっていたのだろう?
「譲司……」
「どうしたんだい?」彼は私のそばへ歩み寄ってきた。その優しさに、泣きたくなるほどだった。
私は振り返り、彼を見上げた。「いつもそばにいてくれてありがとう。私……少し、思い出してきたことがあるの」
それは完全な嘘ではなかった。確かに思い出したこと...
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