第3章
日曜の夜は、強烈な衝撃だった。
和也が家を出て三日が経っていた。彼の誕生日の大惨事の翌朝、彼は慌ただしくロサンゼルスへ向かったのだ。その三日間は、私に危険なほどの明晰さをもたらした。静かな時間を見つけては履歴書を更新し、C大時代の知人に連絡を取って海外勤務のポジションについて問い合わせていた。
彼の都合のいい存在でいるのは、もう終わりにしたかった。
さくらはリビングのソファにごろりと寝そべり、巨大なスクリーンにはディズニープラスの映像が光っていた。私はペルシャ絨毯の上であぐらをかき、月曜にさくらが持っていく学用品を仕分けていた。その時、エレベーターの到着を告げるチャイムが鳴った。
和也の足音が最上階のマンションに響き渡る――聞き慣れた、自信に満ちた、そして私の内で荒れ狂う嵐には全く気づいていない足音。彼の荷物は、まるで世界の所有者であるかのように、無造作にドアのそばに放置されていた。
私はさくらの算数のワークシートから顔を上げなかった。彼をじらさせてやろう。誰かがすぐに飛んで駆けつけないとどうなるか、思い知らせてやりたい。
三日間の沈黙は、私の胸の内に冷たく鋭い何かを結晶させていた。私は出ていく。もうすぐ。
「二人とも」和也の声には、ここ数ヶ月聞いたことのない興奮がこもっていた。「知らせがあるんだ」
さくらは彼の声の重みを察して、観ていた番組を一時停止した。私は距離を保とうと決め、算数のワークシートを仕分け続けた。
「美咲がニューヨークに来る」と彼は告げた。「しばらく、うちに滞在する予定だ」
世界が、ぐらりと傾いた。
さくらは教科書をそこら中に散乱させながら、ロケットのように飛び起きた。「ママ? ママが帰ってくるの!?」彼女は和也に飛びつき、その腰に腕を回した。「ほんと? 今度は本当に?」
「本当だよ、お姫様」和也はさくらを抱き上げながら、心から温かい笑みを浮かべた。「水曜にはここに来る」
散らばったプリントを前に、伸ばしかけた私の手は、アナと雪の女王さながらに空中で固まった。
これが、終わり。こんな風に、終わるんだ。
「絵里、すごいことだと思わない?」さくらの声が私を現実に引き戻した。彼女は満面の笑みで、喜びで震えているかのようだった。「ママが帰ってくるのよ!」
私は、笑顔に見えることを願いながら口の形を作った。「それは……それはよかったわね、さくら。すごく嬉しいでしょう」
けれど、私の声はどこかおかしかった。か細く、今にも砕け散ってしまいそうに。
さくらの頭越しに、和也の視線が私を捉えた。そこにちらついたのは何だっただろう。罪悪感? それとも、警告?
「絵里」彼は慎重に言った。「美咲がいる間は、プロとしての距離を保ってほしい。わかるな」
プロとしての距離。ええ、そうね。
「もちろんです」私はどうにか答えた。「さくらちゃんのために必要なことなら、何でも」
(あなたの完璧な再会が台無しにならないように、何でもね)と、心の中で付け加えた。
それからの三日間は、準備という名の拷問だった。
月曜の朝、さくらが学校の支度をしている間に、和也はキッチンで私を捕まえた。
「主寝室から……君の私物を片付けておいてほしい」彼は私の目からわずかに視線をそらしながら言った。「美咲がその方が……落ち着くだろうから」
「寝室にお手伝いさんの痕跡がなければ、ということですね?」私はさくらのお弁当箱を、必要以上に強く置いた。「承知しました」
彼の顎に力がこもる。「事を荒立てるな、絵里」
「夢にも思いませんわ」私は彼の横を通り過ぎ、コーヒーメーカーに向かった。「ゲスト用のウィングに移ります。ご家族の居住スペースからは、遠く離れたところに」
コーヒーを注ぐ手が震えていた。「家族」という言葉が、刃のように私たちの間に突き刺さっていた。
火曜はさらにひどかった。さくらが美咲のためのウェルカムバナー作りを手伝ってほしいと言い出したのだ。その熱意は伝染するようで……そして、胸が張り裂けそうになるほどだった。
「絵里、キラキラにしてね!」彼女はためらいなくグリッターを貼り付けながら要求した。「ママに、私たちがどれだけ会いたかったか知ってほしいの!」
私たち。その言葉が、深く胸に突き刺さった。
私は彼女が完璧なサインを完成させるのを手伝いながら、痛みを飲み込んだ。さくらは、美咲に自分の部屋や作ったもの、中央公園のお気に入りの場所を見せるのだと、ひっきりなしにしゃべっていた。
私が彼女と一緒にいた、すべての場所。これからは、本来の親によってすべてが書き換えられていく、すべての瞬間。
「ママの最初のディナーに着ていく服、選ぶの手伝ってくれる?」さくらは髪にグリッターをつけながら尋ねた。
「もちろんよ、お姫様」私は彼女の癖のある髪を撫でつけた。「すべてを完璧にしましょうね」
だって、それが私の仕事だったから。他の誰かのために、物事を完璧にすること。
水曜の午後、空港。
私は和也のメルセデスの後部座席に座り、彼がゲートの近くを行ったり来たりしながら、三十秒おきに携帯をチェックしているのを眺めていた。彼は最上階のマンションを出る前に、二度もシャツを着替えていた。
美咲がターミナルから姿を現した時、すべてが腑に落ちた。
彼女は息をのむほど美しかった。ただ美しいだけではない――光り輝いていた。ブロンドの髪が午後の光を捉え、優雅なコートは彼女の細い体に完璧に仕立てられていた。彼女は、この世における自分の居場所を一度も疑ったことのない人間のように振る舞っていた。
この女性こそが、たとえ書類上はそうでなくとも、常に和也の精神的な妻であり続ける人なのだ。彼と対等な存在。彼に釣り合う人。
私はフロントガラス越しに二人の再会を見つめながら、心が石に変わっていくのを感じた。彼女を見た瞬間に和也の表情が一変する様を。慎重だけれど、温かい抱擁を。
これが、愛というもの。そして私が手にしたのは、ただの都合のいい関係でしかなかった。
ガラス越しに、車に近づいてくる美咲の視線が私を捉えた。
「美咲」和也は車のドアを開けながら言った。「こちらがさくらの家庭教師、水原絵里さんだ。絵里、こちらは美咲・スターリングさん」
「はじめまして、スターリング夫人」私はプロとして、あくまで中立的な声色を保った。
「どうぞ、美咲と呼んでください」彼女の笑みは丁寧だったが、どこかよそよそしい。「娘が大変お世話になりました」
『私の娘』。〝私たちの娘〟でもなく、〝さくら〟でもなく。
「さくらちゃんは素晴らしいお子さんです」私は答えた。「彼女の担当になれたら、誰でも幸運だと思います」
家までのドライブは息が詰まるようだった。和也と美咲は前の席で、さくらの学校や友達、成長について小声で話し合っている。私はまるで存在しないかのようだった。
そして、それこそが狙いなのだろう。
夕食は、家庭の幸福を描いた傑作のようだった。
私はダイニングテーブルに和也の一番良い食器を並べ、生花を飾り、完璧に準備を整えた。そして、どうやら使用人であるらしい自分のように、キッチンで一人分の食事をとるために引き下がった。
配膳口から、完璧な家族の再会が繰り広げられるのを眺めていた。
「さくらをハンプトンズに連れて行った時のこと、覚えてる?」美咲の笑い声は音楽のようだった。「あの子、どうしてもあの巨大な砂の城を作るって言い張って」
「今のフランス語の授業と一緒だな」和也が同意した。「絵里が言うには、素晴らしい進歩を遂げているらしい」
美咲の視線がキッチンの方へちらりと動いた。「こんなに献身的なお手伝いさんがいて、気が利くことだわ。彼女の教育については、もっと包括的に話し合うべきね。少し……変更を検討した方がいいかもしれないわね」
変更。私の胃がずしりと落ちた。
さくらは母親の注目を一身に浴びて、次から次へとおしゃべりに花を咲かせている。あんなに幸せそうな彼女は見たことがなかった。
私は、本当の奥様が帰ってくるまで、ただ場所を温めていただけの侵入者に過ぎなかったのだ。
その夜遅く、私は狭いゲストルームのベッドに横たわり、主寝室から聞こえてくるひそひそとした話し声に耳を澄ませていた。
「さくらには安定が必要よ」美咲の声が聞こえてきた。「考えていたの……もう一度、やり直してみない?」
心臓が止まった。
「それを何か月も望んでいた」和也が答えた。私に対しては決して使われることのなかった感情のこもった声だった。「さくらは家族を取り戻す権利がある」
「でも、厄介事が起こらないようにしないと」
「わかっている。俺がすべて処理する」
厄介事。それが私だった。処理されるべき、厄介事。
午後十一時四十五分、聞き慣れた足音が私の部屋のドアの前で止まった。
「絵里、起きているんだろう」
私は身動きもしなかった。「寝ようとしているんです、和也さん」
「入れてくれ。新しい取り決めについて話がある」
新しい取り決め。冗談じゃないわ。
「取り決めなんてありません」私はドア越しに言った。「もう、二度と」
「絵里、理性的になれ。美咲がここにいるからといって、俺たちの関係が変わるわけじゃない」
私は起き上がった。傷心は怒りに変わっていた。「私たちの関係? あなたの奥さんがあなたのベッドにいるのに、廊下をこっそり抜け出して、お手伝いさんと寝たいってわけ?」
「美咲は妻じゃない。俺たちはただ――」
「やり直すんでしょう。聞こえたわ」法的にはそうでないかもしれない。でも、重要な意味では他の何よりも妻だった。「その間、私は何をしてろって言うの? あなたの都合がいいように、ゲスト用のウィングで待っていろと?」
「感情的になっているな」彼はやがて言った。「その決断を後悔することになるぞ」
「私が後悔しているのはただ一つ。私を便利なサービス契約くらいにしか見ていない男に、十八ヶ月も無駄にしたことです」
彼の足音は遠ざかっていったが、途中で彼が立ち止まるのが聞こえた。
「絵里……何か芝居がかった真似はするなよ。さくらには一貫性が必要なんだ」
さくら。いつも、さくら。絵里が必要としていること、絵里が望んでいること、絵里がもっと良い扱いに値することなんて、決して口にしない。
「ご心配なく」私は彼の背中に向かって呼びかけた。「移行が円滑に進むようにしますから。プロとしての距離、でしたよね?」
翌朝、午前九時に美咲がキッチンにいる私を見つけた。さくらが学校の支度をしている間に、私は彼女の朝食を用意していた。
「絵里さん」美咲は優雅な手際の良さでコーヒーを淹れた。「さくらのためにしてくれたこと全てに、改めてお礼を言いたいの。あなたは明らかに……献身的だったわね」
「さくらちゃんは、愛さずにはいられない子ですから」私は慎重に答えた。
「ええ、そうね」美咲は大理石のカウンターに寄りかかり、私を品定めするように見つめた。「あの子には今、安定が必要なの。自分の人生において、誰が一時的な存在で、誰が永続的な存在なのかを理解する必要がある」
メッセージは、この上なく明確だった。
「承知しております」
「そうでしょうね」美咲の笑みは完璧に計算されていた――親切に見えるほど温かく、それでいて支配を確立するのに十分なほど冷たい。「結局のところ、私たち二人とも、さくらにとって最善の道を望んでいる。時にはそれが……身を引くべき時を知るということでもあるのよ」
「もちろんです」
「わかってくれると思ってたわ。あなたはとても分別のある子のようだから」
子。女ではなく、子。
胸の内で込み上げる怒りにもかかわらず、私は落ち着いた手つきでさくらの朝食の準備に戻った。
これがおとぎ話の終わり。私が藤原和也の完璧な人生において、つなぎ以上の存在だったことなど一度もなかったのだと、そう見せかけるのはもうやめる時だ。
その夜、いつもの癖で携帯をチェックしていると、リンクトインからの通知に心臓が跳ね上がった――国連の石原拓海という人物から、週末に応募した求人の一つに返信があったのだ。面接。来週。






