第7章

 月読橋でのあの夜を境に、桃子の姿は完全に消え失せた。

 屋敷の空気は、すっかり変わってしまった。

 以前は私を値踏みするように見ていた護衛たちも、今では私が通りかかるたび、姿勢を正して「奥様」と頭を下げる。

 最も意外な変化を見せたのは、綾美だった。私が桃子を水から引きずり上げて叩きのめすのを目撃して以来、この横柄なお嬢様は傲慢さをすっかり引っ込めた。私のそばを通り過ぎる時、彼女は不自然に目を逸らしながら黒バラの枝を指差し、どう剪定すべきかそれとなく仄めかしてくるほどだ。

 この弱肉強食のマフィアファミリーにおいて、一度真実が暴かれれば、敗者は噂話のネタになる資格すら失う。

 数...

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