第9章

 あの日から三日後、病院から電話があった。

「ロマーノ様、ダンテ・ファルコーネ様が大量出血により危篤状態です。現在ICUに入っております」看護師の声は事務的だった。「うわ言で、ずっとあなた様のお名前を呼んでいらっしゃいます」

 私は電話を切った。

 窓の外では、シチリアの海風が椰子の木々を揺らし、日差しが地中海の上で煌めく模様を描いていた。目の前の机には、レオの遺骨が置かれている。八年間の母としての時間と、殺された幼少期が詰まった、小さな木の箱だ。

「会いには行かないわ、いい子だから」私は骨壺に向かって囁いた。「あの男に、そんな資格はないもの」

 五日目、ルカが知らせを持ってきた。...

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