第5章
ミラ視点
夜風が私の髪をかき乱す。眼下には、散りばめられたダイヤモンドのように街がまたたいている。車の往来する音が、遠くかすかに聞こえてくる。ルカは手すりに寄りかかり、シガーの煙が闇に溶けていく。
私は首を振る。ベランダの手すりを強く握りしめた。「ううん。感謝してる。それに……」一度、唾を飲み込む。「起きたことを後悔はしてない」
傷のある方の眉が、くいと上がる。「感謝だけか?」
首筋がじわりと熱くなる。私は自分の手元に視線を落とした。「それに……あなたのことが、好き、かも。少しだけ」
その言葉は、かろうじて唇から漏れ出た。
ルカはシガーの灰を弾き落とし、口元に弧を描く...
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