第2章

 この家から、私という存在を消す作業を始めた。

 マフィアの世界で死体を始末するには、酸と石灰が必要だ。だが、結婚生活の始末はどうだ? 黒いゴミ袋が数枚あれば、それで事足りる。

 寝室の金庫を開ける。中にはブローニングM1910が入っていた。ニコがくれたものだ。結婚したばかりの頃、誰かに脅された私を守るためにと、彼がこの銃を渡してくれた。「君には絶対に弾なんて当てさせない」と誓って。

 冷たい金属の感触を指先でなぞる。未練はない。私はそれを無造作にゴミ袋へと放り込んだ。

 次は、ミラノから特注で取り寄せたレースのウェディングドレス。かつては財産ほどの価値があったものだ。私はハサミを掴むと、トレーンを切り裂き始めた。あの複雑で繊細な刺繍をズタズタにし、細切れになった布切れを袋に押し込んで封をする。

 そして、笑いが込み上げてきた。最初は音もなく。やがて涙が出るほど、その笑いは大きくなっていった。

「ライリー?」

 振り返ると、チャコールグレーのオーダーメイドスーツに身を包んだニコが入り口に立っていた。床に散らばる惨状を目にし、眉をひそめている。その瞳には、本物の心配の色が宿っていた。

「ライリー、大丈夫か?何かあった?」

「なんでもないわ」私は目元を拭った。袋の口をすべて縛っておいてよかった。ニコにあの切り刻まれたウェディングドレスを見られずに済んだのだから。「ただ、これらが場所を取っていると思って。そろそろ片付ける時期だと思ったの」

「ライリー」彼は歩み寄り、私を止めようと手を伸ばした。「どうしたんだ? 最近、何か不満でも?」

 彼は心底心配しているようだった。彼は本当に私を気にかけている。そして、それこそが何よりも耐え難いことだった。

「ニコ」私はついに彼の方を向き、揺るぎない声で言った。「役に立たないものを置いておくと、命取りになるわよ」

 彼は一瞬固まった。それから、諦めたように優しくため息をつく。「わかったよ。君が片付けたいなら、好きにすればいい。でも、無理はしないで、俺も子供たちも、君を心配しているんだ」

 彼は腕時計に目をやった。「今夜は会合があるんだ。遅くなるかもしれない。終わったらすぐに帰るよ」

 彼は一歩近づき、私の顔にかかる髪を優しく払った。その手つきは軽く、慎重だった。「少し休むんだよ、いい? ここでバタバタするのはやめて。最近、顔色が悪いぞ」

「ん」私は頷いた。

 彼はもう一度私を見た。何か言いたげだったが、結局ただ微笑んで、背を向けた。

 遠ざかる彼の背中を見送る。かつて私のために弾を受けると誓った男が、今や私の心臓に最も鋭いナイフを突き立てている張本人だった。

 彼が会合になんて行かないことは分かっていた。けれど、怒りは湧いてこない。怒りなどという感情は、とうの昔に意味をなさなくなっていた。

 ニコの裏切りが心臓に突き刺さるナイフだとするなら、子供たちの態度は、その刃に塗られた猛毒だった。

 その日の午後、私はリビングに座っていた。レオとミアが学校から帰宅し、靴を履き替え、ジャケットを放り投げる。

 私は立ち上がり、努めて明るい声を出した。「おかえり。今日はチョコレートケーキを焼いたのよ。あなたたちの好物でしょ。食べる?」

 レオは漫画から一瞬だけ顔を上げ、すぐに視線を戻した。「いらないよ、ママ。今夜はパパが夕食に連れてってくれるんだ」

 空中で私の手が止まる。

「え?」

「パパ、昨日約束してくれたもん」ミアがソファから顔を上げる。「私たち、アレッシアと一緒に……」

「ミア!」

 レオが弾かれたように顔を上げ、鋭い声で妹を遮った。そして、あの愛らしい笑顔を私に向ける。「ママ、夕食があるから今はケーキ食べられないんだ。でも明日のために取っておくよ、ね? ママのケーキは世界一だから!」

 ミアは黙り込んだ。余計なことを言いかけたのだと悟ったのだ。

 彼らはこれまでずっと、私に嘘をついていたのだ。二人とも。父親の嘘に加担して、私を欺いていた。

 以前のことを思い出す。学校から帰ると、二人は私の腕の中に飛び込んできたものだ。その日の出来事を競うように話してくれた。このソファで身を寄せ合って、一緒に本を読んだりもした。

 あの頃とは違う。私は、レオがあの精巧なモデルガンで遊ぶのを禁じた。あまりに危険だからだ。ミアには寝る前のキャンディを禁止した。虫歯が酷くなっていたから。

 距離ができ始めたのは、その頃からだった。

 目の前の二人の子供を見つめる。その顔立ちは、痛いほどニコに似ていた。同じ目。そして、私の顔を真っ直ぐに見据えたまま平然と嘘をつける、その才能までも。

 子供は本当に、父親に似るものね。

 抑え込んでいた感情が、ついに波のように押し寄せた。私はその波に飲み込まれ、肺から空気を絞り出されるような息苦しさを覚える。

「そう」

 私は残った力を振り絞り、無理やり微笑んでみせた。その声はあまりに弱々しく、まるで独り言のようだった。

「あなたたちが幸せなら、それでいいの」

前のチャプター
次のチャプター