第8章

 ニコが近づこうとした瞬間、私は身を引いた。

 車椅子が石畳を擦る音が響く。看護師がハンドルを掴み、私を止めた。

「ライリー……」彼の声は震えていた。

「もう終わったのよ、ニコ」私は平坦な声を保つ。「あなたが私を見つけたところで、何も変わりはしないわ」

 すると、彼は私の目の前で膝をついた。

 誰にも弱みを見せたことのなかったあの男が、今は地面に這いつくばり、顔を涙で濡らしている。

「俺が間違っていた」言葉は途切れ途切れだった。「頼む……一度だけ、チャンスをくれ……」

 チャンス、だって?

 聞いてやりたかった。私が乗るべき車をあなたが選んだとき、私にチャンスをくれたのか? ...

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