第276章 一人の前線医として

翌日、中山さんは院長のハッサンに簡単な引き継ぎを済ませると、私を促して古びた医療用ミニバスに乗り込んだ。二階の窓辺から私たちを見送るハッサンの姿が見える。その表情は沈痛でありながらも、確かな祈りに満ちていた。

「さあ、出張と行こうか。巡回医師の気分を味わうのも悪くないぞ」

私の不安を見透かしたように、中山さんが慰めの言葉をかける。

ミニバスがニャラを出発して以来、まともな町らしきものは二度と私の目に映らなかった。

夕闇が迫る頃、一台の簡素なテントの前で車が止まる。

車を降りると、そこは半ば干上がった荒地だった。少し強く足踏みをしただけで、乾いた土埃が舞い上がる。地表には、過酷な環境...

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